「不当労働行為」の責任をとれ!外国人技能実習機構を提訴しました

活動報告

2023年3月20日、私たち仙台けやきユニオンは外国人技能実習機構に対し、「不当労働行為」に対する損害賠償を求めて提訴しました。以下に、その経緯と当組合の求めることを紹介します。

〇契機となったベトナム人技能実習生らの労働問題の概要

昨年の2月、宮城県石巻市にある水産加工業者の工場で技能実習生として働いていたベトナム人女性3人は退職強要の被害にあいました。仕事上のミスを理由とし、職場を辞めさせられました。また、この職場では会社の役員が大声で怒鳴り叱責するなどのパワハラや、早朝の掃除時間分の賃金の未払い賃金、機械での作業中に人差し指を切断する労災も発生していました。

この時技能実習生らは、技能実習生を支援する立場にある監理団体に相談しましたが、当該監理団体は支援を拒否し、むしろベトナムに帰国するよう告げられてしまいます。

次に技能実習制度の監督機関である外国人技能実習機構にも相談しましたが、外国人技能実習機構は「会社が求めているのは(中略)今後はトラブルを起こさないと反省し、謝罪すること」、「お互いに問題があった」とあたかも、職場における労働問題について実習生側にも非があるような内容を本人たちに伝えました。

監理団体も技能実習機構も助けてくれない状況に直面したベトナム人技能実習生らは、仙台けやきユニオンに加盟して会社と交渉することになりました。
(この事件自体は解決しました。こちらのブログをご覧ください。)

 

〇国の機関が企業の違法行為に加担。組合の脱退を示唆

技能実習生らがユニオンに加入し、会社と交渉を行おうとした矢先、技能実習機構側から「技能実習生らと話がしたい」と連絡が来ます。技能実習生らとユニオンのメンバーが技能実習機構の仙台支部に出向いたところ、技能実習機構の担当者は技能実習生らに対して次のように発言しました。

「監理団体にさっきちょっと電話した所ですね、(会社)に戻るための話し合いをする、条件としてユニオン(注:加入する労働組合・仙台けやきユニオンのこと)を脱退するって事を言われました。今すぐには決められないと思うんだけど、OTITが問題解決をサポートして、もしそれでも解決できなかったら、またユニオンにお願いするという方向もあると思います。」(録音あり)

復職の代わりに労働組合の脱退を求める会社側の行為は、労働組合法に定める「不当労働行為」に該当する違法行為です(労働組合法第7条)。しかし、外国人技能実習機構は、会社や監理団体の行為を是正させるどころか、むしろ労働組合の脱退を促すともとれる発言を、技能実習生に対して行ったのです。

さらに、技能実習生らに直接、会社に謝罪をし、3人が支援を求めて加入した仙台けやきユニオンを脱退すれば復職の可能性があるとも技能実習生らに伝えました。

このやりとりを見る限り、外国人技能実習機構が、企業や監理団体の側に立ち、さらには違法な労働組合の脱退要求をも代弁しているといえ、人権侵害への「加担行為」であると当組合は考えています。

〇機構はユニオン側からの抗議に対して不十分な謝罪

以上のような事件に対して、仙台けやきユニオンは公的機関が「団結権を侵害した」として、技能実習機構側に抗議を行いました。その抗議に対する機構側の回答(2022年4月12日)は下記の通りです。

「当事務所の職員が、当該技能実習生らに対し、貴ユニオンの脱退を促していると受け取られかねないメールを送付するなどしたことは、不適切な対応であり、誠に遺憾に存じます。当機構においてこれまで労働組合の脱退について言及したケースがあったとは承知していませんが、技能実習生らには日本人労働者と同様に貴ユニオンを始めとして労働組合に加入する権利があり、使用者において労働組合に加入したことの故をもって不利益な取り扱いをしたり、労働組合から脱退することを求めること等が不当労働行為に該当するおそれのある行為であり、改めて職員に周知し、今後とも、その指導を徹底して再発防止を図ってまいります」
外国人技能実習機構からの回答(20220412)

このような回答は、自身が当事者であるにも関わらず「遺憾」だといい、まるで第三者であるかのように責任回避に努めており、組合に対する謝罪すらなく、何がどのように問題であったのかがわからない回答であると考えています。つまり、違法性を認めず、機構の責任を曖昧化しているのです。

その後、当該の組合員らの転職が円滑に終了したのち、仙台けやきユニオンは改めて機構に対して謝罪と賠償を申し入れました。しかし機構は、昨年4月と同様に、今回の機構の行為は「不適切な対応」とし謝罪の言葉はあったものの、違法性について認めることはなく、慰謝料の支払いも拒否しました

この回答を受けて当組合は、機構が今回の行為の違法性を正しく認識していないということは、同様のことが再び起きる恐れがあると考えています。何が問題であったか、どのようなレベルの違法行為であったかということが認識されていないからです。

〇今回の機構の問題点「不当労働行為」「団結権侵害」と提訴

機構が行ったことは、下記の違法行為と関係します。

・「不当労働行為」
→ユニオンの脱退を促すというのは、使用者が行えば、労働組合法7条で規定される「不当労働行為」と呼ばれるもの。「支配介入」にあたる

・「団結権の侵害」
→憲法28条に規定された労働者の団結権を侵害

このような行為を会社(使用者)が行う場合、憲法違反であり、労働組合法違反として問題になります。なぜなら、この法令で守られる労働者の権利は、労働者の生存を守り、適切な労使関係を築くために必要不可欠な権利だからです。それを侵害するような行為を機構は行っています。

さらに、今回の被害者となる技能実習生は日本人の労働者より制度上はるかに不安定な状態に置かれており、転職が認められないことなどを影響で「奴隷」になりやすいという指摘がある方たちです。そのような事態に陥らないよう技能実習生らを守るのが機構の仕事のはずであり、それをやらないどころか会社の違法行為に加担するという機構の行為は、きわめて深刻な問題です。

本 来、取り締まり機関であるはずの技能実習機構が技能実習生の人権を守ることができないのであれば、制度は破綻していると言わざるを得ません。

よって、組合員や組合の権利を侵害した技能実習機構を、私どもは機構を提訴することにしました。司法を通じて、機構の不法行為をはっきりさせ賠償させることが目的です。反省を促し、再発防止につなげます。

技能実習機構は、使用者がやれば不当労働行為といえることをしました。機構は根拠法上でも技能実習生を保護する役割を持つにもかかわらず、技能実習生の組合に加盟する権利を妨害し、そしてそれを通じてユニオンの団結権も侵害していています。また、ユニオンの脱退を促すということを技能実習機構という公的機関が行ったことで、促された側には脱退の圧力は強くかかるものだと思います。
これはユニオンの団結権・利益を侵害し損害を生じさせるする行為であり、それは不法行為を構成し、損害賠償を払う義務が生じると考えています。

今後、裁判が進んでいく中で、推移は発信していけたらと思います。
応援よろしくお願いします!

〇メディア報道
・2023/3/20 国の機関が「実習生」への違法行為に関与 ユニオンが外国人技能実習機構を提訴(今野晴貴 ヤフーオーサー)
・2023/3/30 “活動に大きな支障” 労働組合が外国人技能実習機構を提訴(NHK 宮城NEWS WEB)
・2023/3/20   「技能実習生に労組脱退を働きかけた」労働組合が“外国人技能実習機構”を提訴“110万円の損害賠償”仙台地裁(TBC 東北放送)

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