妊娠をした従業員に対する「マタハラ」問題に対して、会社と交渉した結果、会社はマタハラの事実を認め、産休・育休の権利を勝ち取ることができました!

活動報告

大手中古車会社X社にパートタイマーとして勤務するAさんは、妊娠をしたことを理由にシフトを白紙にされ、「妊娠は迷惑だ」と店長から言われるなどのマタニティ・ハラスメントを受けました。その件について、Aさんは仙台けやきユニオンに加盟し、マタニティ・ハラスメントへの謝罪・責任追及のために会社と交渉をしました。

交渉の結果、会社はマタハラの事実を認め、Aさんは産休・育休の権利を勝ち取ることが出来たので、ここに報告します。↓事案の詳細はこちらをご覧ください。

妊娠をした従業員に対する「マタハラ」問題に対して、 大手中古車会社X社に申し入れをしました!

 

〇会社との交渉で権利を獲得!

団体交渉に際して、私たちは以下の3つを会社に対して要求しました。

(1)マタニティ・ハラスメントについて謝罪し、責任をとってください。

(2)Aさんの雇用継続、軽減業務での就労を求めます。

(3)休業中の賃金をお支払いください。

⑷会社内でマタニティ・ハラスメントが二度と起こらないように、再発防止策をとってください。

 

そして団体交渉をした結果、会社からの回答・対応は以下の通りです。

⑴店長、会社がマタニティ・ハラスメントに該当する不適切な対応をしたことを認め、Aさんに謝罪をする。

⑵妊娠中であっても働くことができるように、勤務日数や勤務時間、仕事内容をAさんと話し合って就業継続可能な労働環境を整える。また、産前産後・育児休業を取得する期間の雇用継続を保障する。また、仕事復帰後の最初の雇用契約の更新も保障する。

⑶当初に定められていたシフト通り、賃金を払う。

⑷再発防止策として、マタニティ・ハラスメントに関するハンドブックを作成し、社員全員が内容を確認するようにする。

会社はAさんに対してマタニティ・ハラスメントに該当する不適切な発言・言動があったことを認めました。そして、会社はその責任をとり、Aさんに謝罪し、解決金を払うことになりました。現在Aさんは、体調に合わせた業務内容や勤務時間で働くことが出来ており、産休・育休の権利を獲得することができました。

今の社会では、正規雇用の女性や、専門職の女性は産休・育休を取得できる一方で、非正規雇用の女性は、就業の継続を望みながらも妊娠・出産を期に退職を余儀なくされていることがほとんどです。Aさんが権利を獲得したことは、社会的にも非常に意義がありますし、同じような雇用形態の女性を力づけることにもなります。

また交渉の中で、具体的な再発防止策をとるように要求したところ、問題が発生した時に相談ができる社員の配置や、会社内でマタニティ・ハラスメントに関するハンドブックを作成することになりました。

◯なぜ会社でマタニティ・ハラスメントが起こるのか?

そもそも、なぜ会社でマタニティ・ハラスメントが起こるのでしょうか?今回の事案も、たまたま意識の低い店長や副店長だったから問題が起こってしまったのでしょうか?問題の根本について考えることは、企業社会でなぜ女性が仕事配置でも労働条件でも低く差別されているのか、について考えることにもなります。今回の事案も、意識の問題では回収できないということが分かるはずです。

企業は常に、いかに生産性を上げ、利益をあげることができるかを考えています。ゆえに、女性特有の生理的な現象は企業の利益追求にとっては邪魔、となるのです。

例えば妊娠をした女性は、体調が不安定になりますし、身体に負担のかかるような仕事もできません。そうなると会社としては、その労働者を普段通りの仕事内容で、長い時間働かせることができなくなります。効率的にたくさん働くことができなくなった労働者を雇うことは、会社にとってはコストと考えられるのです。だからこそ会社は、子どもができたら職場から排除したり、子どもができても妊婦の身体を考慮せず働かせたりするのです。実際Aさんは、体調不良で働くことが出来なかったことを「迷惑」と言われ、同じ職場の人に謝るように指示されました。そして、一方的にシフトを削除されて職場から排除されました。

 

◯女性が安心して働ける環境を作るには?

 ——女性が会社で働ける時間の限界が指摘され、それが、女性が責任の重い職務につけない理由とされる場合が極めて多い。建前に掲げられるのは能力差であるが、この場合の「能力」とはすぐれて、どれほど家庭を顧みず長時間働けるかなのだ。——

(熊沢誠『女性労働と企業社会』、p.129より)

ここにあるように、社会では、何があっても会社の仕事だけに打ち込んでくれる労働者が「能力」があり、「一人前」とみなされています。女性でいえば、子どもを持たずに働き続けられたり、生理や更年期症状が軽く男性と同じように働くことができる女性が、「一人前」とみなされます。しかし、それは本当に「一人前」の労働者なのでしょうか?

それは違います。決して、男性並みにバリバリ働くことができる女性だけ社会進出できる社会が、「男女平等」で「女性が活躍できる」社会ではないでしょう。

日本の企業の中では、自分や家族の体調不良やその他の事情で休めば、評価に響くかもしれない、努力していないと思われるかもしれない、だからこそ仕事を休めないということが起こります。しかし、何があっても休まず働くことができる労働者だけが活躍できる社会はおかしいです。だから、会社からの過大な要求達成や長時間労働を強いられるような「標準」な働き方を変えて、体調や個人の事情によって休めるような、安心して働ける社会を作っていく必要があると思います。このことは、今の日本社会から過労死をなくしていくためにも非常に重要です。

私たちユニオンは、労働者の権利を守り、ハラスメントや女性差別、そして労働者を使い捨てることのない、あらゆる労働者が働きやすい職場を作ることを目指しています。今回Aさんのマタハラ問題に取り組み、実際に体調や個人の事情に合わせて休める環境を作りましたし、それに加えて全体の労働時間を減少させたり、労働者を使い潰す起業をなくすために取り組んでいます。

そして働きやすい職場環境を実現するために、会社と交渉して会社と労働者・ユニオンの間で、労働条件や労働環境に関するルールを決めます。今回でいえば、マタハラが起こった際には会社として責任をとり再発防止策を具体的にとること、そして非正規雇用の女性も産休・育休をとり、その後も働けるような環境をつくること、になります。これによって、会社側が安く・長く・休まず働く労働者を選び取る一方で、「標準」な働き方ができない労働者を排除することを規制することができます。そして、交渉後もその職場で働き続けたり、同じような問題を抱える労働者が仲間になったりして、会社に圧力をかけ、社会に問題を提起し続けることを通じて初めて、「誰もが安心して働くことができる職場環境」を作ることができると思います。

実際Aさんは、ユニオンに加入し勇気を出して声をあげることで、女性として、そして労働者としての権利を勝ち取ることが出来ました。それだけではありません。会社内でマタハラを許さない環境を作りましたし、非正規雇用の女性も権利を獲得できるのだと、同じような状況にある女性に力を与えることにもなると思います。

 

◯ハラスメントなどの問題を抱えている方は一緒に闘いましょう!

Aさんが組合に加入し会社と闘ったことは、女性労働者が雇用形態を問わず差別されない労働環境を形成することや、体調不良で休むことすらも許されない過酷な労働環境に対しても問題を提起することにもなりました。女性は妊娠・出産のみならず、生理や更年期症状など、日常的に問題を抱えています。これらを理由に職場で差別されることは決して許されません。

職場でマタニティ・ハラスメントやセクシャル・ハラスメントを受けた、生理や更年期症状を理由に職場で不利益を受けた、などの問題がある方は、ぜひご相談ください!誰もが働きやすい労働環境を一緒に作っていきましょう!

 

◯Aさんからのコメント

今回、妊娠を機に起きた沢山の職場問題がありました。
最初はどうすることもできずひたすら苦しい毎日でしたが、思い切って声を上げたことにより職場環境が改善し、しっかりと働けています。もし私のように悩んでいる女性がいれば、1人で悩まないで欲しいです。行動を起こすことは大切なことだと感じました。

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