私たちは、現在、ベトナム人技能実習生への不当な退職強要の問題で、技能実習先と団体交渉を行っています。その問題の解決のために動いている中で、外国人技能実習機構による「不当労働行為」が発生しました。これは、外国人技能実習制度の存在に関わる大きな問題です。このことについて外国人技能実習機構に申し入れを行いました。下記に、概要を説明します。
〇不当な退職強要の相談を外国人技能実習機構にするも、問題は解決しなかった
組合員ら3名は、技能実習先から不当な退職強要を受けました。こちらは過去のブログでも紹介しています。本人たちは会社を辞めたくなかったために、会社に対して退職を撤回し、会社および監理団体とも話し合いをしました。しかし両者は、組合員らの主張を一切聞かず、ただ退職を求めました。監理団体は、技能実習生らをサポートするどころか、ベトナムに帰るように求めたと実習生らは言います。日本で働きたい組合員ら3名は困り、外国人技能実習機構の仙台支部に相談しました。しかし、問題は解決しませんでした。技能実習機構は、組合員の3名に対し、「あなたたちにも悪いところがある」といい、会社に対して謝罪をするよう求め、謝罪文を書いて監理団体に送るように指示しました。監理団体はその謝罪文を技能実習先に送りすらせず、対応を放棄していました。
〇ユニオンに加盟して問題を解決しようとしたら、「ユニオンの脱退」をすすめてくる機構
その後、組合員ら3名は私たち仙台けやきユニオンに加盟し、問題を解決しようと考え、会社に団体交渉を申し入れました。その後、機構より、組合員の3名に対し、話をしたいという連絡があり、話し合いを行うことになりました。この際、機構は、組合員をひとりずつ呼び出し、それぞれに対し、「監理団体が、職場に戻る話し合いをする条件として、ユニオンを脱退することを条件として言ってきた、皆さんはそれを考えてほしい。この話し合いがだめになってからユニオンに入るという選択肢もあるから」と伝え、その後各個人にメールを送り、「ユニオンは脱退したか」の確認を行いました。その後、組合員は、ユニオンは脱退しないという回答をしました。機構の職員は再度、組合員らにメールを送りました。そこには、「会社が求めていることは以下のことです。1 ユニオンを脱退すること 2 今後はトラブルを起こさないと反省し、謝罪すること」と、会社の不当労働行為をそのまま伝え、「機構はまずみなさんが職場に戻れることが第一だと思っています」と書かれていました。そのメールは下記のようなものでした。
〇外国人技能実習機構の問題と申し入れ書の提出
そもそも、外国人技能実習機構は「外国人技能実習機構は、外国人の技能、技術又は知識の修得、習熟又は熟達に関し、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図り、もって人材育成を通じた開発途上地域等への技能等の移転による国際協力を推進することを目的」としていますが、実習先で起こった賃金不払いといった労働法違反や退職強要、ハラスメントといった労働者(技能実習生)への権利侵害に対して調査や指導を行わず、また、当該監理団体が行なうべき転職の支援等を拒否したことおよび労働組合の脱退を条件としていることに対して、調査や指導を行っておらず、「技能実習生の保護を図」っているとは到底言えません。
さらに、外国人技能実習機構は、当該監理団体が組合員らに対して労働組合の脱退を復職の条件としていることを一切問題視することないどころか、一度、脱退して解決する選択肢もあることを示唆する発言を行っています。外国人技能実習機構も組合員らが労働組合を脱退して話し合うことを求めているとも取られる発言内容であり、労働者の基本的な権利である団結権を外国人技能実習機構が侵害しています。以上のような問題に対して、仙台けやきユニオンは技能実習機構に対して、今回の問題の事実確認や改善、および不当労働行為を行う会社から技能実習生らを転職させるよう求めました。申し入れ書は添付の通りです。機構の誠実な対応を求めています。
申し入れ後、今回の件については記者会見で報告もしました。組合員たちも話をしてくれて、「機構が助けてくれなくてがっかりした」「他にも困っている人たちのためにもかわってほしい」「安心して日本で働きたい」と述べていました。
報道された記事
2022/4/6 パワハラ訴えた実習生に労組脱退を示唆? 外国人技能実習機構に抗議(朝日新聞)
2022/4/5 退職強要されたベトナム人実習生、労組脱退促した機構に抗議(毎日新聞)
〇会社との交渉の経過
技能実習生の労働問題については、会社との交渉が続いています。会社は不当な退職強要の事実を認めず、職場復帰は認めてくれません。一方で、未払い賃金があったことは認め、支払うと言っています。ほかにも、労災被害にあっていた技能実習生もおり、その被害の回復なども交渉しています。引き続き、技能実習生の権利を求めて交渉を続けていきます。
〇技能実習制度の廃止を求めて、「技能実習制度廃止プロジェクト」が署名活動を実施しています。
今も多くの実習生が、「現代版奴隷制度」と言われる技能実習制度の下で人権侵害を受けています。そもそも、転職が認められておらず、借金を背負って来日する技能実習生は、世界的には「現代的奴隷制」とみなされています。米国務省の人身売買年次報告書で 2007年以降繰り返し批判されてきた上に、国連自由権規約委員会などからも人権侵害であると勧告をされ続けています。そのなかで、転職ができないがゆえに労働問題が必然と発生しています。直近の厚生労働省の調査「技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況 」においても、受け入れ企業の実に7割で違法残業や低賃金などの労働基準関係法違反が明らかになっており、技能実習生は到底人権が守られた環境で働いているとは言えない状況です。
そのようなか、Z世代の若者たちが「技能実習制度廃止プロジェクト」を立ち上げました。今回の事案も、Z世代の若者が支援しています。プロジェクトでは署名活動も行っています。今回の事案にも表れているように、権利を主張しない「奴隷」であることが求められるような制度はなくしていきましょう。
外国人を奴隷化する技能実習制度の廃止を求めます!
コメント