〇失業が原因で「貧困」に陥ったベトナム人元留学生Aさん
今年4月中頃、ベトナム人のAさんは「生活がとても大変で困っているから何とかしてほしい」とユニオンへ相談に訪れました。このときの貯金は392円だけ。
話を聞くと、Aさんは3月までは留学生で、4月から「特定活動」の在留資格で求職活動をしているところでした。生活が苦しくなったのは、これまで勤めていたアルバイト先で、突然、職を失ったためでした。
〇突然シフトから外されて仕事を失う
アルバイト先は全国に店舗をかまえる鮨屋。
Aさんは、仙台市内の店舗で2019年から働いていており、鮮魚・鮨・総菜などの調理や販売を担当。かねてより店長には3月末での退職をすると伝え、了承も得ていたそう。雇用契約では、就労期間について「期間の定めなし」となっており、Aさんは3月末までは働けると考えていました。
しかし、ある日突然仕事を失ったのです。
2月10日、いつも通りＡさんが出勤すると「Aさんは今日でおしまい、と店長が言っていた」と日本人の社員から告げられました。あまりに突然のことだったためＡさんは状況を飲み込めませんでしたが、壁に張り出されていた次の1ヶ月分のシフト表をみるとＡさんの名前はたしかにどこにもなかったのです。さらに、シフト管理の担当者である店長は、その日は出勤しておらず、Ａさんはそれから2か月以上店長からの説明を待っていたが何の音沙汰もありませんでした。
こうして2か月分の就労予定期間を働くことができずＡさんは生活困窮に陥ったのです。
〇「なにも説明なく”退職”はおかしい」――会社との団体交渉の結果、請求額の100%が支払われました！
「なにも説明がないままシフトから外されたのはおかしい。なぜそうなったのか店長からせめて説明はしてほしい。」と、Aさんは会社と団体交渉をすることを決意しました。
交渉では、働くはずだったのにシフトに入れなかった約2か月分の賃金を求めました。
さらに、始業および就業の時間が15分単位で換算されており、15分未満の賃金について適切に支払われていなかったため、これについても未払い分の賃金を請求しました。
そして、団体交渉が終わった数日後、会社から「請求額の100%を支払う」との連絡がありました！
会社から連絡がなく数か月は泣き寝入り状態だった今回の事件でしたが、団体交渉の申し入れから3週間ほど、一回の団体交渉で解決することができたのです！
〇あなたは悪くない。諦めずにユニオンへ相談を！
アルバイト先の会社は
「Aさんが勤務中に同僚と話していた」
「余分に作られた総菜を食べた」
などを、Aさんをシフトから外した理由として挙げました。
この理由だけで、シフトを一切入れないというのは横暴です。それは、当事者にとっては実質的には解雇と同じようなものでした。
労働者にとって、労働者の収入が減ったり、失業してしまうと、瞬く間に生活基盤を維持できなくなり、生存に係ります。しかし企業はそれを無視して、自身にとって都合が悪い労働者を切り捨てます。
Aさんは当初「店長と仲が悪かったから私をやめさせたのだろう」と言っていました。人間関係の悪化が今回のシフト外しの原因だから、Aさん自身にも悪いところがあった、といいました。しかし、たとえ何かしら、労働者側に非があっても、会社がやったことは許されることではありません。
もし労働者が会社にとってなにか不利益をはたらいた時には、けん責（注意すること）や減給など、会社はその程度に応じて労働者に改善を促すことが必要です。このような手続きを無視して、突然シフトをなくしたり、解雇することはできません。
今回のことでいえば、会社は、解雇はしていないとしても、シフトに一切入れませんでした。今回のことは、就業規則上の懲戒処分でも何でもありませんでした。一方的に、シフトをなくしたのです。そうであれば、今回のシフト外しは、会社の都合で、Aさんの契約上の出勤日に対して会社が一方的な都合で休業させた、とみなすことができます。よって、ユニオンは、Aさんが本来であれば働くことができた日数分の賃金を要求したのでした。ユニオンで請求したところ、無事すべての就労予定期間の賃金が支払われました。
ベトナム人でもだれでも、労働における権利はユニオンで実現できます。
外国人労働者、留学生たちに話を聞くと、アルバイト先の会社で「3回遅刻したらクビ」と伝えられている人が多くいますが、これは全く不当なことです。こういうものも、ユニオンで闘えば、解雇を撤回させたり、損害賠償をしてもらうことができます。
仕事でトラブルがあったとき、まずはユニオンへご相談ください！
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