Aさんは、スキマバイトアプリを介してピザーラで配達業務を行っていました。
しかし、配送途中にバイクで転倒し重い後遺症の残るけがを負ってしまいました。Aさんはもう杖無しで歩くことも、杖を使って10分以上立っていることもできません。将来歩くことができなくなると医師から診断を受けています。私たちはAさんに対する十分な補償を求め、交渉を行っています。
これまでの詳細な経緯については、過去のブログをご覧ください。
前回のブログに記載したように、フォーシーズ側は困窮するAさんへの「生活支援金」の支払いを検討する意向を示しましたが、「生活支援」の内容は、50万円の一時金の支払いのみで、一時金の支払いの条件は、Aさんが今後フォーシーズに対して、賠償請求などはしないという債権放棄の合意をすることとされていました。
こうした請求権の放棄を条件とした「生活支援」に、わたしたちは抗議しました。
12月16日には、改めてフォーシーズからの回答が来ました。
無条件に50万円を支払う意向を示す
当ユニオンからの抗議の連絡の後、フォーシーズは請求権放棄の合意書を締結せずに、「特別見舞金」として50万円を支払うことを提案してきました。
少額ではありますが「特別見舞金」が支払われることになったのは、この間の交渉の成果です。Aさんは家賃や光熱費の支払いで生活が苦しい状況でしたので、生活費の足しにすることができました。
今回の「特別見舞金」はAさんの怪我に対する損害賠償とは関係のないものあることについては確認がとれていますので、怪我に対する損害賠償は今後も追求していきます。
フォーシーズが残業代不払いを認め、支払いを約束した
わたしたちは残業代未払いの支払いも求めていました。
スキマバイト労働者は、就業開始時と就業終了時にQRコードを読み取りますが、求人記載労働時間と異なる労働時間の場合はQRコードの読み取りとは別に、労働時間の修正申告を行う必要があります。
Aさんがピザーラ仙台太白店で働いていたとき、修正申告が電波の不具合で遂行されなかったことが何度かありました。それにより生じた残業代不払いを求めていました。
わたしたちの手元には残業代不払いを証明する証拠はありませんでしたが、フォーシーズがアプリの管理者であるシェアフル社から勤怠履歴を取り寄せたところ、残業代不払いが発生していることが判明しました。フォーシーズは、勤怠履歴から明らかになった残業代の未払を認め、Aさんに支払うことを約束しました。
違算金の払い戻し
Aさんが働いていた店舗では、配達後に釣り銭の金額が合わないと賠償をさせられるルールがありました。
事前に配達員とスタッフで釣り銭の入った財布の中の金額の確認が行われることもないので、Aさんはこのルールに疑問を感じていましたが、次の仕事に入れるか不安に感じ拒否できず、過去に3度賠償をしたことがありました。
Aさんが働いていた店舗では、配達後に釣り銭の金額が合わないと賠償をさせられるルールがありました。
この違算金について、Aさんが賠償していた分が払い戻されました。
Aさんが整骨院で治療を受けることが遅れたことへの謝罪が行われました
Aさんは足の骨折だけでなく、上半身もむち打ちなどの怪我を負っていました。そのため、上半身の治療のために整骨院に通う必要がありました。労災保険の適用を受けながら整骨院で治療を受けるためには、会社側の証明が必要になります。しかし、フォーシーズ側は、Aさんからの事故の証明を拒否していました。そのせいでAさんが整骨院で治療を受けるのが数ヶ月遅れてしまい、むち打ちの症状が悪化してしまいました。
この件について、フォーシーズは事実を認め、Aさんに謝罪をしました。また、再発を防止するために責任の明確化などを行ったとのことです。
証明に協力しなかった理由は、会社側はコミュニケーションの齟齬が原因であったと説明しています。
団体交渉の拒否の記載について、フォーシーズ側からの削除の依頼
わたしたちは2024年10月頃のブログにて、フォーシーズが団体交渉を拒否していると抗議しました。
この件について、フォーシーズからは、団体交渉を拒否した事実はないのでブログ発信を含めた各種発信を修正するようにと求められています。
この要求に対して、改めて事実関係とわたしたちの見解を述べておきます。
2024年8月の時点でフォーシーズ側は、団体交渉の条件として主に以下の2点を提示してきました。
・参加者は5名まで
・動画・写真撮影は不可
会場の利用可能人数に限りがあることは理解しますが、5名という非常に少ない人数の制限をわたしたちへの意見の聴取もなしに一方的に提示したため、わたしたちは人数の制限は不当であると抗議しました。しかし、当初フォーシーズは5名以上の参加を認めませんでした。
また、動画・写真の撮影に関しても、フォーシーズ側を撮影する意図ではなく、わたしたちの活動記録のための撮影であると説明しているにも関わらず、フォーシーズは当初撮影の許可を出しませんでした。
上記2点について、私たちとフォーシーズで折り合いがついてはいなかったものの、9/11に団体交渉が予定されており、その2日前の9/9午前11時には、フォーシーズ側から、会場予約のために人数を確認させてほしい旨を私たちにメールを送ってきていました。それに対し、私たちは「10名ほど」で行くと返信をしていました。
そこまでしたうえで、フォーシーズ側は、9/9の午後8時に団体交渉開催の予定を延期すると通知してきました。直前の一方的なキャンセルです。
フォーシーズ側は、「建設的な団体交渉はとても難しく思われます」と一方的に断定し、労働委員会にあっせん申し立てを行ったのです。
一度も団体交渉をしたことがないのに、そのように断定するのはおかしいですし、団体交渉のルール(人数、撮影)についても、団体交渉で話し合うべきと考えていました(なお、団体交渉のルールが事前に合意に達しないからという理由で延々と団体交渉を開催しないというやり方は労組法7条2号違反<団体交渉拒否>にあたります)。
こうしたフォーシーズの一連の対応をみて、わたしたちは「団体交渉拒否」にあたると評価していたのです。労組法7条2号の団体交渉応諾義務に照らして、正当な評価であったと今も考えています。
とはいえ、10月25日に初めの団体交渉が開催されて以降、フォーシーズ側は、団体交渉の出席者数についての不当な制限をなくして、(労組側の参加者の)撮影を許可したうえで、団体交渉に応じていることを申し据えておきます。
最後に
ようやくフォーシーズ側は、Aさんへの「生活支援」を行いました。事故から約8ヶ月、団体交渉を始めてから約半年が経ったのちではありますが、これは大きな成果です。
スキマバイトアプリを介した労働では、直接雇用の従業員と異なり、企業に責任を追及しにくい現状があります。スキマバイトアプリでの勤務中に怪我をしたり、勤務に起因して病気になったりしたうえ、十分な補償が得られていないという方は、仙台けやきユニオンまでご相談下さい。
今後、フォーシーズとの交渉は、主に後遺障害への賠償をめぐる内容で続きます。今後とも活動へのご支援やご協力のほど、よろしくお願いします。
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