- 仙台市内にあるB社が当労働組合の組合員のX さんに一日あたりほとんど数分~1 時間未満で終わる内容の業務しか与えず、労働組合による改善交渉を経ても半年ほど業務内容・時間にほとんど改善がみられなかったことについて、当労働組合(以下、ユニオン)は 2024 年 5 月、宮城県労働委員会に不当労働行為救済申立てを行っていました。その事件について、このたび和解が成立しましたのでご報告いたします。詳細は下記のとおりです。
B社は、2020 年 7 月末に X さんが体調不良で1ヶ月休職したところ、 X さんを解雇しました。ユニオンはこの解雇を不当だと考え、解雇の撤回を求め団 体交渉を行いました。その結果会社は解雇を撤回しましたが、解雇撤回後も会社は X さんの職場復帰を認めていませんでした。その後もユニオンが交渉を継続した結果、2023 年に会社は職場復帰を認め、2023 年 10 月上旬から X さんを正社員として元の所属部署のまま職場復帰させました。このとき、会社との労使紛争の全てが解決したとして、ユニオンのブログでもご報告をさせていただいておりました。
しかし会社は、復帰初日から日々の勤務において、X さんにほとんど数分~1 時間未満で終わる内容の業務しか与えませんでした。X さんはフルタイムとして 1 日 8 時間の労働時間が定められておりましたが、朝出勤して退社するまで何もすることが無い時間が 7 時間を超える日が大半でした。
ユニオンはこうした状況は 2023 年 10 月の職場復帰直前に会社と組合で締結した「職場復帰に関する協定書」に違反していると考えました。この協定書には【会社は X 組合員に対し、総務部の他の社員と比較して総務部業務を著しく不当に過小配分されることがないよう十分配慮する。なお、ユニオンならびに X 組合員は、常識的な範囲内で多少の業務量の配分や内容に差が出る可能性があることを認める】と書かれています(個人名は X に変換)。そこで、ユニオンは会社に改善を求め交渉を行いましたが、交渉が半年にわたっても、X さんに割り振られる業務がほとんど一日 1 時間未満である状況にはほとんど変化がありませんでした。
こうした状況から X さんは著しい精神的な被害を受けた心労で、今年5月から医師の診断のもと休職を取っていました。
半年以上にわたって X さんに仕事をほとんど与えない会社の対応は、業務上の合理性がないとユニオンは考えました。それにもかかわらず会社がこういった一連の対応を続けたことに対し、ユニオンとしては、会社が組合員による組合活動自体に忌避感を抱き、「業務の過小な要求」型のハラスメントによって組合活動を妨害する意図で一連の行為を行っていると考えざるを得ませんでした。
労働者の団結権や団体交渉権、団体行動権を定めた憲法や労働組合法では、労働条件を正当に改善しようとユニオンに加入して声をあげた人に対して「不利益な取り扱い」を行うことを「不当労働行為」として禁止しています。
そこで当ユニオンは、2024年5月に、宮城県労働委員会に「不当労働行為救済申し立て」の手続きを行いました。不当労働行為救済制度は憲法で保障された団結権等の実効性を確保するため、労働組合法に定められている制度です。
参考:不当労働行為救済制度とは(厚生労働省 HP から一部引用)
(https://www.mhlw.go.jp/churoi/shinsa/futou/futou01.html)
宮城県労働委員会の不当労働行為救済申立ての審議が進む中で、労働委員会の審査委員から和解を勧められ、労使間の協議により、下記の条件で和解が成立しました。これはユニオンや労働者にとっての大きな成果です。
1, X さんは離職票上の退職理由を「会社都合退職」として退職する。
※雇用保険の失業手当の受給について経済的不利益を受けないようにするため
2, ユニオンは、X さんの職場の同僚らに対し以下の内容を口頭で説明できる機会を和解成立後すみやかに設ける。ユニオンが作成した説明会への案内文書は、会社が X さんの職場の同僚全員に必ず渡す。
・不当労働行為救済申し立てに至った経緯。会社が組合員 X さんに復職後も一日あたりほとんど数分~1時間未満で終わる内容の業務しか与えなかった行為が不当労働行為に当たると組合は考え、申立をしたこと。
・救済申し立ての手続きの中で、労働委員会から和解を勧められ、和解合意に至ったこと
・法律で認められた労働組合の権利一般。
・組合員 X さんが労働組合を使って労使交渉を行ったことは法律で認められた労働組合の正当な権利であり、労働者は誰でも労働組合を通じて職場内のトラブルや労働環境の問題について会社と交渉する法的な権利を有していること。
3, 会社は X さんに対して解決金を支払う。
4,会社は全社員に対し、ユニオンが作成した、2 と同内容について説明した文書を送付する。
(X さんからいただいたコメントをそのまま掲載しています)
2023 年秋にようやく復職を勝ち取ったのも束の間、復職初日から会社には裏切られ続け、本当に悔しく辛い日々を過ごしてきました。しかし、組合や県労委の皆さまにご尽力いただき、和解成立という一区切りがついたことに心から感謝しております。
私は復職時の解決ブログでも述べたとおり、個人的な利益のみではなく全ての労働者の利益となる解決を目指し、労働組合が持つ本来の力や労働者の権利を示す一助になりたいと考えて会社と闘ってきました。当初私が目指した解決は《一度は不当な扱いを受けた私が会社に復帰して働き続け、共に働く人たちと協力して内側から長期的に労働環境を改善していくこと》でした。また《会社が気にいらない社員を実質的に排除できてしまう実績を作らないことは重要》だと考えていました。
今回、和解を決断するまでに自問自答を繰り返すなかで出した、私なりの結論があります。
それは、私が組合の仲間と続けてきた一連の労使交渉による成果は、自分の職場だけではなく一般的にも『会社側の恣意的な解雇や配置転換などをけん制する効果をもたらす事例』として残り続けるため、私の当初の目的を十分達成できたといえるだろうということです。
今後同じような被害が起きないように、もし起きて決まったときにも被害を受けた方はどんな対処ができるのか知れるように、事例を残せたことはとても良かったと思います。
今後も私は労働組合員として、一人の社会人として、弱い立場にいる人たちと支え合いながら、自らや皆の権利を守っていける社会の一助となれるようサポートを継続していきたいと思います。
2020 年から長いあいだ応援していただいた皆さま、本当にありがとうございました。
※B社との交渉は2025年2月の和解成立をもって解決しました。B社との交渉の一連の経緯は過去のブログ記事一覧にまとめています。次のリンクからご覧いただけます。
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