10月25日、ピザーラの運営会社である「フォーシーズ」と団体交渉を行い、11月18日には、改めてフォーシーズからの回答が来ました。
Aさんは、スキマバイトアプリを介してピザーラで配達業務を行っていました。しかし、配送途中にバイクで転倒し重い後遺症の残るけがを負ってしまいました。Aさんはもう杖無しで歩くことも、杖を使って10分以上立っていることもできません。将来歩くことができなくなると医師から診断を受けています。私たちはAさんに対する十分な補償を求め、交渉を行っています。
これまでの詳細な経緯については、過去のブログをご覧ください。
Aさんへの生活補償の支払いは、「債権債務関係がないことを確認」が条件の50万円
前回の交渉にてフォーシーズは、困窮するAさんへの生活補償の支払いを検討する意向を示しました。
しかし、回答書で示された「生活支援」の内容は、50万円の一時金の支払いのみでした。50万円だけでは、生活補償として全く足りません。
その上、一時金の支払いの条件は、Aさんが今後フォーシーズに対して、賠償請求などはしないという趣旨の合意をすることとされています。
わたしたちとAさんは、Aさんの足の怪我の症状が固定したのちに、深刻な後遺障害に対する損害賠償を請求する予定でした(会社側は、会社規定で定めた法定外補償を支払う用意があると言っていますが、その金額はAさんが今後生活していくうえで全く不十分なものだとわたしたちは考えています)。
Aさんは今でも足の痛みで眠れない日があります。不運なことに、予後の悪い深刻な怪我になってしまったAさんは、一生この障害とともに生きる必要があるのです。こうした障害に対する請求をしないことを条件に、50万円の支払いを受けることはできません。
生活の苦しいAさんの足元を見るかのように、50万円の一時金支払いと引き換えに、今後の請求権の放棄を求めるフォーシーズの姿勢に、断固として抗議します。
スキマバイト差別を否定しながらも研修のマニュアルを公開しないフォーシーズ
Aさんはスキマバイトで配達をしていたピザーラ仙台太白店では、シェアフル経由の労働者には15分程度の動画(うち運転技術に関する内容は5分程度)を見せるだけで、走行研修はありません。この理由を店長は次のように説明しています。
「短期バイトが再びピザーラの配達業務に就くかどうかわからない。公募をかけた労働時間を全て研修に使っていたら募集をかけた意味がない。」
団体交渉にてフォーシーズ本社の職員たちは、フォーシーズ全体でスキマバイト労働者に研修を行わないという方針ではない、一人ひとりの技能をみて研修の必要性を判断していると回答しました。スキマバイト労働者を差別しているわけではないという回答です。
わたしたちは、フォーシーズ側の回答の真偽を確認するため、フォーシーズ本社が作成している、アルバイトスタッフ・管理者向けの研修に関するマニュアルの公開を求めました。スキマバイトの労働者ではない常勤の労働者も含め、どのような研修をする取り決めになっているかを確認することで、Aさんへの研修の対応の正当性を判断したかったのです。
しかし、フォーシーズは、アルバイトスタッフ・管理者向けマニュアルは、団体交渉の議題と関係ないから開示しないという回答をしてきました。
フォーシーズはスキマバイトの労働者を差別していないと主張するなら、アルバイトスタッフ・管理者向けマニュアルを公開すればよいだけの話です。それにもかかわらず、マニュアルを公開しないという対応に疑念を抱かずにはいられません。
違算が発生した際の賠償に関する全国調査も開示しない?
Aさんが働いていた店舗では、配達後に釣り銭の金額が合わないと賠償をさせられるルールがありました。
事前に配達員とスタッフで釣り銭の入った財布の中の金額の確認が行われることもないので、Aさんはこのルールに疑問を感じていましたが、次の仕事に入れるか不安に感じ拒否できず、過去に3度賠償をしたことがありました。
このような釣り銭の賠償は、フォーシーズ本社の方針ではなく、ピザーラ仙台太白店独自の「ハウスルール」であったと説明がありましたが、我々はこのような方法がとられている店舗が他にもあるのではないかと考えています。そのため、フォーシーズに対して、全国店舗での実態調査と、過去に賠償させられた事案があった場合、それを返金することを求め、フォーシーズからはこの要求に対して、全国調査を行い、確認がされた場合返金を行うと回答が得られました。
しかし、その後フォーシーズは、全国調査の内容、時期などの詳細については、団体交渉とは関係がないことなので開示しませんと回答してきました。
Aさんは、自分だけでなく他の人もこのような問題に遭っているのではないかと思い、全国調査をフォーシーズに提起するにいたったのです。それにも関わらず、私たちに調査や対応の詳細を伝えないのは、不可解であり、本当に問題として捉えているのか甚だ疑問です。
最後に
ようやく団体交渉を行うことができ、生活補償の打診や、証拠の開示要求などが進み始めたかと思いきや、団体交渉後にフォーシーズから送られてきたのは、大変不誠実な回答でした。
フォーシーズは、Aさんの怪我に対してあまりに軽く考えており、また労災を含む様々な問題の再発の防止についての要求について誠実に対応してくれていません。
これからも仙台けやきユニオンは、Aさんに負わせた怪我の責任を求め交渉を続けていきます。
スキマバイトアプリを介した労働では、直接雇用の従業員と異なり、企業に責任を追及しにくい現状があります。スキマバイトアプリでの勤務中に怪我をしたり、勤務に起因して病気になったりしたうえ、十分な補償が得られていないという方は、仙台けやきユニオンまでご相談下さい。
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